私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

クリスチアンコッホ特許検索

http://d.hatena.ne.jp/narrenstein/20050922/p2
というわけで(どんなわけだよ)遅くなりましたが特許を調べてみたいと思います。

まず基本を押さえましょう。

  • 特許は出願して審査請求をして成立してないと特許になりません。
  • 期限は出願から20年です。
  • 出願してから1年半で特許の内容は公表されます。
  • 3年以内に審査請求しないと自動で取り下げになります。しかし平成13年9月30日以前の特許出願については7年です。*1

よし確かコレであってる。

特許電子図書館に行きます。
http://www.ipdl.ncipi.go.jp/homepg.ipdl
このページ、リンクがjavascriptだらけで辟易しますがとりあえず「初心者向け検索→特許・実用新案の検索」へ突入。
「クリスチアン コッホ」で検索すると2点出ました。
鉱油又は植物から得られるエンジン用及び加熱用燃料を処理する装置」
「脂環式構成単位を有するジアミンを基本とするポリイミド
下の方はクリスチアン・フィッシャーさんとユルゲン・コッホさんの特許なので除外。上の方ですね。
念のため共同発明者や会社名で検索すると、上記特許(特許公開平10−54312)しか出ません。つまり例の「なんでもバイオディーゼルにできる夢装置」の特許が出願されていたとすると、ここ1年半以内の出願でない限り上記特許です。
それでは上のほうの特許に進み「詳細表示」をクリックして内容を読んでみましょう。
まずみる所。
【審査請求】未請求
【出願日】 平成9年(1997)4月2日
ふむ、平成16年4月2日までに審査請求しないと取り下げですね。はい終了。
って、この文章は違うらしいんです。1年半たって公開までの間に請求がなかったってことです多分。*2ただ、成立する自信がある奴だと速攻で請求するんでそこから微妙に読み取れたり読み取れなかったりするわけです。あー抑え特許くさいなとか。日本でビジネスするつもりがなかったらお金が無駄になっちゃうんで様子見てるのかなとか。
んで良く調べたんですがまだ成立はしてないっぽいです。16年4月2日に請求して、だともしかするとまだ審査中かもしれない危険があるので軽々しく使えません。

次に内容をみましょう。お仕事でみるなら請求項ですが、とりあえずどんなのか知りたいだけなんで「詳細な説明」を読めばいいです。というか請求項なんて知財のひとと一緒じゃないととてもじゃないが読めません。

詳細な説明はこんな感じで始まります。

  1. 燃料を改質して不完全燃焼を減らすことで排ガスをクリーンにしたりしたい
  2. フツーは添加剤を加えるけど、たいていそれって有毒物質
  3. 液体とか粉体の添加剤をタンクに入れておいてまぜたり混合比を管理したりするっての面倒だよね!
  4. だから既存の装置で、とある合金で作った粒をを添加剤の代わりに入れて加熱することで改質するのがあるんだけど、合金の内容が「水銀、鉛及びアンチモンを合金元素として含む錫合金」で排ガスにでてっちゃうから結局使えない!
  5. というわけで俺は錫と銅の合金で粒径を工夫して装置作ったぜ!

あーさいですか。これならまあまともに見えなくもない。でも次から電波入ってくるんだよね。

本発明の装置を使ったときのエンジンの効率の向上と排ガスの改善とは容易に測定できるけれども、反応エレメントの材料の消費が余りにも少ないので、これまでのところ、利用できる測定装置でその量を測定することは不可能であった。

いや、燃料側を測定しろよ。というか特許にいいわけを書くな。*3

反応装置の効果を生じさせるメカニズムはこれまでのところ推定もできていないけれども、反応装置を流れる過程でエンジン用又は暖房用の燃料の炭化水素分子に錫原子が付着して化学反応により形成される有機錫化合物の量と、銅の割合が4〜5%の時に最善の低さで、銅の割合がこれより大きくなると錫の割合が95〜96%より大きくなったときと同じく上昇する錫合金の融点との間におそらく関係があるのであろう。

いや、解明しろよ。というか「推定できていない→のであろう」っておまえ推定してるじゃん!*4あと合金の融点がどうやったら関係があるのだ。*5

反応装置の下流側に燃料フィルターを配置すると反応装置の効果が低下することが分かっている。この負の効果は、処理されたエンジン燃料と該フィルター内のデポジットとの化学反応の結果であるかも知れない。

特許に推測を書くなよ。*6というか燃料フィルターでキャンセルされる改質って何よ。
なんか長くなってきたがここからがキモ。まるまる引用するぜ。

研究を更に進める過程で、驚くべきことに、従来はエンジン用又は暖房用の燃料を製造するには不適だったいわゆるバイオオイルを本発明の装置でエンジン用又は暖房用の燃料にすることが可能であることが分かった。本発明の装置はこの目的のために流れの方向において反応装置の上流に触媒を有し、それは、好ましくは加熱装置と反応装置との間に配置され、更なる加熱装置を備えており、これにより作動中にそれを約400℃に加熱する。該触媒は、例えば、燃料が通過することのできるハニカム状のコージエライトの支持本体から成り、これは例えばLaCoO3等の適当な触媒物質でコーティングされる。上記の温度で触媒にクラッキング・プロセスが生じ、バイオオイルの長い分子鎖がより短い炭化水素鎖に変換され、その燃焼特性は、後に、該処理の最終生成物を直後にエンジン用又は暖房用の燃料として使用できるように本発明の反応装置による処理で改善される。

だ・か・ら、感想を書くな。「驚くべきことに」とか。*7
えー、要は触媒通したあとにこの装置を使うと燃料油になるって言ってる?でもこれ「処理の本質」が加熱した触媒じゃん!「より短い炭化水素鎖に変換」するのが燃料油にする場合のキモであって、この特許の装置関係ないよ。
あと「従来はエンジン用又は暖房用の燃料を製造するには不適だったいわゆるバイオオイル」ってバイオディーゼルと全然関係ないよね。植物油をそのまま使えないって話でしょ。特許に詳細をかいてない触媒じゃなくてもアルカリ方で処理してもいいわけじゃん。*8

流れの方向において互いの背後に触媒と反応装置とを配置するという本発明の構成の利点は、クラッキングのために必要な触媒でのバイオオイルの加熱を同時に反応装置での処理にも利用できるという点にある。触媒で必要な温度は反応装置に使用される温度よりかなり高いので、好ましい実施例では、エンジン用又は暖房用の燃料管路の流れの方向において触媒の下流側に及び/又は反応装置の下流側に熱交換器が設けられ、その中を既に触媒で処理されている又は触媒で処理されるべきエンジン用又は暖房用の燃料が流れる。その熱交換器のうちの少なくとも1つには分流器が設けられ、それはバーナー又はエンジンの吸気管路に結合される。

触媒通すためにせっかく暖めたんだから当発明の装置にも通すとお得ですよ!ってそれ特許に書くことかよ。関係ないだろ!*9

結局

  • 原理が作ってる奴にもわかってない
  • 何が起こってるかもよくわからない
  • でも燃料は改質されました
  • 触媒によるクラッキングで燃料油作る所にこのよくわかんない装置をくっつける事で触媒の所までひっくるめて一つの装置になるんで「この装置は特許出願中です」って言い張れる
  • そして多分永遠に出願中

*1:このめちゃめちゃ長い審査請求のタイムラグを利用して特許とれそうになくても出しておいて同業他社を牽制とかする。なんせちゃんととれた場合の3分の1も牽制できるし。ソフトウエアにおいては7年≒永遠である。

*2:確か前に切れてる切れてると思って特許公報のほう調べたら成立してたとかあったという話を聞いたことがある。

*3:ちょっとムカッとした

*4:結構イライラ来た

*5:エネルギー関係…?触媒…?謎。

*6:だんだんあきれてやる気が失せてきた

*7:かなりむかついた

*8:ぐったりしてきた

*9:しょんぼりしながら