私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

盾の勇者の成り上がり

小説家になろう」というサイトがある。
ランク上位から下位まで色々読んでいて、これはセラピーなんじゃないかと思うようになった。
普通、商業出版されている小説というのは編集者という読者によってある程度改善されてから出てくる。
でも、小説投稿サイトでは、そのフィルタはない。
手慣れた、こなれた作者では、あまりにも作者が全面に出てきた文章にぶつかったりしない。「ログ・ホライズン」なんかがそうだ。でも、そうでない作者がどんどん書き進めると、そうならない。「盾の勇者の成り上がり」なんかがそうで、作者の内面がもろに内容に反映されていると感じる。
盾の勇者の成り上がり」では、特に何も悪いことをしたわけではない主人公が唐突にゲーム風の異世界召喚をされたかと思うと悪意のある女性の罠にはめられて苦境に陥り、人間不信になるところから物語が始まる。
誰も信じられなくなって単独行動するものの「盾の勇者」というルールの制約で壁に突き当たり、奴隷の幼女を購入するところから人とかかわり、その子を通じて徐々に信頼する人間関係を築けるようになっていく。
最終的にその絆でラスボスを粉砕するのだが、やっぱりラスボスも罠を仕掛けてまわって喜ぶ種類の悪女なんである。最初とかわんねーじゃねーか!
エンディングまで読んでみて、これ主人公は作者そのものとしてしか読めないし書いていて癒やされてきたのだろう、としか思えなかった。で、最近始まった番外編がまたアレで、「盾の勇者のやりなおし」なんですわ。本編で主人公同様痛烈に裏切られて女性不信になった槍の勇者は女性が全部ブタに見え話す言葉も豚の声にしか聞こえない発狂状態にずっと陥っているのだけど、それが新しい主人公になって時間ループを起こして本編以外の解決ルートを探るという。そこでは「盾の勇者」は以前よりも女性を信じているキャラクタとして出演していて、前より女性を信じられるようになったのかなあ、もしくは槍の勇者のように助けてくれる相手を見つけたのかなあ、とその変化に微笑みを禁じ得ない。
小説家になろう」の小説は美文でもないし、無理な展開もこじつけも多いし、矛盾も考証ミスも多いが、「なんでこのひとはこれをかかないといけないのか」の視点で見るとどれもこれも、すごい楽しくて面白い。
ナマの精神がもれだしてくることの魅力、というのがそこにはあるのです。