私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

着物文化、正しく伝えてくれよと泣かれました。ごめん無理。

ある和裁で生計を立てている方の話。

中国製だけど正絹だって渡された反物が、感触がおかしいの。方向性があってね、引っ張る方向によって違う。しかもどうも縫いにくいんだよ。絶対正絹じゃないと思ってさ、糸を縦横一本づつ抜いて燃してみたのさ。
横糸は絹の、じわじわって燃え方なの。でも縦糸は見る間にぶわって燃えちゃった。化繊だね。正絹じゃなくて絹ポリだよこりゃ、そんな言葉があるんだかどうだかわかんないけど。
半分入れた絹がかわいそうだよまったく。こんなの買ってくるなってお客さんに言ったのさ。
そしたら今度その客が、中国産の和服を持ってきて袖が長くて体に合わないから直してくれって言うの。
測ったら袖が短いんだよ。何が長いって背が長い。背と袖の長さで背が長いってのは、常識的にはやっちゃいけないんだよ?中国のお針子に教えてる人はいったい何をやってるんだろうね。ぶんなぐってやりたいよもう。

和服の各部の長さの比というのは規則が決まっていて、身長と大体の体格がわかれば厳密に決まってしまうものなんだそうだ。そのルールを逸脱している和服のリフォームをやたら頼まれて辟易しているとのこと。

あと着付けの間違いもひどいね。背中の縫い筋をわざわざ曲げて着付けるように教えてる学校があるんだってさ。恥ずかしくて見ちゃいらんないよ。

あと、あたしのお客に日舞の先生がいるんだけどさ、その人が街中で左前に和服を着ちゃった娘さんをみつけて直してあげようか、っていったら凄い勢いで逃げられちゃったんだって。良く間違ってる娘いるし、まいったもんだよねえ。和服がどんどんおかしくなってるねえ。

…多分その娘、幽霊だったんですよ。

左前右前って、逆に覚えてました。洋服の男のスーツが右前です。だから左の襟は体の前方まで見えているまま届くのが右前。つまり左が前なのが右前。をを混乱してきた。
えーと、右手で懐にあるドスをさっと取り出せるのが右前です。和服を着たら右手を懐に突っ込んで楽に入ったら正解。