私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

ドキュメント「家」

理由

理由

優。
高級マンションの一室で1家族分4人の死体が発見され、入居者皆殺し事件かと思われた。しかし元の入居者はなぜか実家で暮らしている上、連絡つけたら逃亡開始。死体はいったい誰なのか?事件を解きほぐすうち、平成8年の社会や家族の構造について考え込まずにはいられないだろう。
普段の文体とは違い、ドキュメンタリータッチの文章が大量に入っている。インタビュー、警察発表による事実、事件当時のマスコミ報道等の情報が得られるため本当に小説を読んでいるのか自分の感覚が怪しくなってくるほどの出来である。ありがちな「主人公が記者」ではなく、主人公はどこにもいない。主人公は本の外側にいてこのドキュメンタリーを書いている記者、つまり宮部みゆきだといえるかもしれないし、「この世界の極めて近い隣にある本書の世界でのドキュメントを手に入れて読んでいる」読者かもしれない。
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