ふんどしのはなし
ふんどしのはなしをする。
2月14日はふんどしの日なのだそうだ。いや語呂合わせもいい加減にせえよ。
まあそういうわけで、ふんどしを一つ買ってみるかと入手したときの話をする。
私は洗濯乾燥機でボクサーブリーフを洗濯したときのゴムのびろびろとした伸び具合に辟易していた。これはなんとかならんものか。
ゴムを使用しない下着はないものだろうか。
あります。ふんどしです。
買ってみるとえらいシンプルな代物である。腰のまわりに回して結べる長さのひもの真ん中に、手ぬぐいサイズの布がぶら下がっている。
まずは洗濯してみた。当然他の洗濯ものに混ぜて乾燥まで連続である。
確かにゴムはないので、伸びたりはしないのだが、ひもの部分がはちゃめちゃに他の洗濯ものに頑丈にまとわりついて千切らんばかりである。結構心配になるし取り出すときにまあまあ手間取る。この時点でゴムを使用しない下着を採用して主戦力にしようという計画はかなり暗雲立ち込めた。
しかし使い勝手がよければまだ挽回の余地がある。
そこで使ってみた。
布を腰の後ろに回し、腹の前でひもを蝶結びにし、布を股の下を通してひもの内側に入れ、前に垂らして装着である。
ここで最大の問題が発覚する。腰にくるのだ。
ふんどしがなくとも再現可能なのでまずみんな試してほしい。まず足をそろえてまっすぐ立つ。極力背筋を伸ばしたままを左手を腰の後ろにあてて、左手中指を股の下までスライドさせよう。その状態で右手を体の前から股の方にもっていって、左手中指に触れてみてほしい。ハイぎっくり腰。
いやこれ冗談でなく、まあまあの力が腰にかかるのだ。体が変な方向にひねられる。体の硬い者にはマジでキツイ。
「布を股の下を通してひもの内側に入れ」がこんなに肉体的にきついとは買ってみるまでわからなかった。負担を軽くして装着しようとすると、足をそろえて直立するのではなくて肩幅かもう少し開いた状態で少ししゃがみながらやる必要がある。姿勢を想像してもらいたい。江戸時代、って感じがしないだろうか。おひけえなすって。
ただ装着できてしまえばまあまあ快適である。ゴムの締め付けがまったくないし、布のあたりも心地良い。
問題はトイレである。特に出先のトイレだ。
まず、着用中は座って使うトイレ以外の利用は不可能である。パンツ…いやこの文脈だとなんかわからんな、ズボンと組み合わせたとき小便器が使用不能になる。真ん中にスリットがあいていないうえに、ゴムを使った下着のように下にずらすこともできない。伸縮性がないからね。よって、出先で用を足すためには必ず個室に入らねばならない。ちょっと不便である。
入ったら脱ぐのは簡単だ。腰の後ろからズルッと引っ張ればよい。ズボンだっていつも通りひざまで下げるだけでよい。ただしひもは腰の周りで不動なので、引っ張って出てきた布が便器の中に飛び込もうとする。布の行方に気を付けて腰のまわりにまき直し、ひもに絡めて軽く固定しよう。そうすればまあ用は足せる。
さて終わって、ウオシュレットも使い終えて、拭いて、立ち上がる。そのときに布の端の行方に注意しておいてほしい。はだけて便器の中に飛び込もうとします。ちゃんとつかんだまま立ち上がってほしい。さあ水を流せますね。
ここでまた注意。腰のひもから布を引っ張って固定を外した勢いで床に接触しかけることがよくあります。きれいな床ならいいけどさ、今メリーさん駅の個室トイレにいるの。誰がメリーさんか。
だから布の端をつかんだまま慎重に立ち上がり、床に接触しないように気を付けて掴んだまま股の下に誘導し、逆の手で体の前からその布をつかんで腹の前に
はいここで腰にきます。
少し前に足を開いてかがめば楽だといったな。足をそろえるときついと。
ついさっきズボンをひざまで下げるだけでよいといったな。そりゃ足首まで下げたら床にズボンがついてしまうからな。
対となる罠がコンボを発生させて腰痛不可避である。
正解は便器に座る前にズボンを全部脱いでフックにかけるかたたんで清潔で乾いたどこか、荷物の上などに置いてしまうことでした。いやこんなのわかんねーよこんなのやってみるまで。
ズボンが床でぬれる汚れる危険さえないのであれば、脚広げてスクワットして負担なくふんどしを再装着するのはなんてことはない簡単なことである。たたんであったズボンをはいて颯爽と社会へ復帰しましょう。
まあそんなわけで西洋風下着の方が劇的に楽なんだということがわかったのでした。めでたしめでたし。