私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

続・バイオディーゼルに猫はいらない

昨日の「猫からバイオディーゼルを作る装置」なんだけど、KDV 500という型番からちょっとググってみるとかなーり怪しい事に気づいた。というか、たぶん詐欺。ジャパンメディアネットワークのmobdemみたいなやつだ。

授業でちょっとかじっただけだが、化学プラントってのは基本的に特定の一そろいの化学物質のレシピから特定の一そろいの化学物質を生成するのである。
そこで学んだことはこれだ。

  1. 何でもできるプラントは存在し得ない。少なくとも効率的、経済的に成り立たない。
  2. 複数の入力出力を兼ね備えると結局その組み合わせの数だけプラントを作ったほうが良い

つまり、万能の装置はほぼ存在し得ない。前回のエントリのバイオディーゼル生成がわずかな水分の存在によってエステル交換に失敗し鹸化が起こってしまうように、非常に微妙なものなんである。

ところが、KDV500がものすごい変な装置なのだ。
http://forums.biodieselnow.com/topic.asp?TOPIC_ID=7383
とある掲示板になんか万能装置っぽいことが書いてある。

前回トラックバックいただいた
http://d.hatena.ne.jp/narrenstein/20050915/p2
によれば、ドイツ語の説明部分に

プラスチックや塩化ビニル、ゴムや車のタイヤ、農業廃棄物、殺菌処理した医療廃棄物、瀝青やタール等々もOKということだし

と書いてあるらしい。
上記掲示板に
http://www.globalfinest.com/tech/
こんなリンクもあった。そっからちょいと引用する。

Input materials can include: biodiesel Waste Management

Plastics of all kinds (including PVC's and PET)
• Rubber, including that from automobile tyres
• Waste oils, waxes and fats of all types (including hydraulic oils and Trafooele)
• Agricultural wastes (including animal waste products, spoiled food, etc.)
• Hospital waste materials
• All refinery by-products (bitumen, tars, etc.)
• Sugar Cane
• Biologically regenerating raw materials (wood, vegetables, meat wastes, etc.)
BSE infected animals, Quarantine Disposal

うあーえらい胡散臭い!
ていうかちょっと待て。

meat wastes, etc.

猫オッケーじゃん(笑)自業自得とはこのことですね。

大体車のタイヤってのはリサイクルが難しい代物の代表格みたいなもんである。
http://www.j-sra.jp/flow/index.html
そのまま使うか、燃やして熱にするか、「ゴムはゴムとして再生する」*1しかないのがわかる。
ゴムを油化ってのはできないことの代表みたいなもんだと聞いた事がある。化学工学には詳しくないが、少なくとも経済的には見合わないはず。
ゴムを効率よく80%の効率で油化できるんなら万能装置なんて作ってないで専用装置を作って売れば儲かって儲かってしょうがない状態になると思うのだが?

しかも木とかもオッケーと書いてあるが、セルロースからアルコールを精製する高効率プラントは世界中で石油に代わる代替エネルギーを作ろうとして切磋琢磨しているのに商用化されていない。それ以上の高分子である油(しかも高価に販売できるわけでもない)なんてできるわけないじゃん。
http://ss.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori-26.html
赤字がー!赤字がー!

*1:ゴムとしての品質が落ちるのを考慮しつつ。