我が家のお稲荷さま。
- 作者: 柴村仁,放電映像
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 文庫
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今回は狼のライカンスロープの話。
主人公・高上昇は高校生。母を早くに亡くした父子家庭の長男である。
いつも主夫として家庭を無難に切り回し、父と弟の3人で暮らしていた。しかし、あるとき母の実家に呼び出され、三槌の当主たる自分のルーツを唐突に知るのだが……というのが1巻の話。
なんかミヅチのルーツってことでデイリーポータルZの三土さんの以下の話をちょっと思い出したが、
http://portal.nifty.com/special05/08/26/
そこはライトノベル。単に御先祖様はそうだったんだねーとかルーツよくわかんないねーで終われるわけがない。表題どおり三槌の守り神たる狐、天弧空幻に勢い良く引っ掻き回されるのである。
いや上記の三土さんもきっと蛟(みずち)の血統で竜神の眷属かなんかなんだ。本人も一族郎党も忘れてるけど。雨男だったり晴れ男だったり天候操作体質だったりしないか。
話がそれた。
柴村仁は、私が非常に高く評価している作家のうちのひとりである。
まず日本語がよい。極めて心地よい。テンポがよい。
次に世界がよい。裏も表も闇も光もこっそり作っておいて一断面としての作品がある。うすっぺらなカキワリではない世界がある。
そして、それぞれの理由と思惑でのほほんとしていたり頑張っていたり虚勢をはったり生き生きとした人物たちの描写がよい。
読んでいてその世界に入り込んでいれば、外形的にはハーレムにみえるその描写も必然性が感じられるからなかなかである。というか主人公が日常生活において完璧超人なんだけどな。バトルで役に立たないけど。
- 主夫ができるぐらい生活力がある。
- 料理がかなり上手。
- 金銭感覚がしっかりしている。
- 責任感が強い。
- 包容力がある。
- 勇気もある。
- そこそこ顔も。
- そして朴念仁。
下手すると完璧すぎて感情移入できないので弟の透かヒロインの*1佐倉さんに感情移入するとよろしかろう。
1巻だけ読むとテンプレ的ドジ巫女無口系のコウに辟易しちゃうかもしれないけど、そこを乗り越えればシリーズ通して安定して読める作品。騙されたと思って、本屋でこの五巻の13ページから21ページまで読んでください。それで日本語のセンスが気に入ったら、前巻その場で購入しても多分大丈夫。
大まかなあらすじ書いちゃうとこの作品はいっつもハーレムとバトルで、終わってみると大した事件じゃなかったりするんだけど、細かく読んでいくときちんと熱く、ほわりと暖かく、きりりと切ないのである。おすすめ。
*1:…多分ヒロインだと思うよ?負けるな勝ちとれ正ヒロインのポジション!