私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

{オイレン|スプライト}シュピーゲル

良。
悪くはないし、つまらなくも無いが、これはマルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)のセルフカバーである。そういう意味で新しさには欠ける。
マルドゥック・ヴェロシティでは、前作マルドゥック・スクランブルの都合上バッドエンドが確定していた。希望をもって始まったにもかかわらず、そこへ向かうはずであるというどうしようもない閉塞感が全編に漂っていた。
再演である今回は、希望と明るさのファクタである「若さ」が導入された。成人した帰還兵、戦争が終わってしまった兵士であった前回のランボー的主人公たちではなく、存在しなかった未来を掴み取った、存在しない未来を与えられた「歌う船 (創元SF文庫 (683-1))」のブレインシップや「ガンスリンガーガール」たちと同じ種類の子供たちである。
ただ、精神の健全さに関してはカトル・カールの手下たちとどっこいどっこいなのがヤバイね。描写も相変わらずだしね。可愛い顔してエグイよ、この子達。