私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

当然のような顔

祖母が若い娘だったころのことだ。
従姉妹がお産で家事ができなくなり、ド田舎からやや都会なところへ来て代わりにお手伝いさんをやっていたときのこと。
ある日奥様が困った顔で帰ってきて言うには
「生きた鶏をいただいてしまって、いつかは絞めなければならないのだけど、怖くて誰もできないの」
ときたもんだ。
できますよってんでいよいよ鶏を食べる日に。
そこには若い娘が一人で淡々と鶏を解体する姿があった。
脚をひょいと束ねて持って頚を一気に切り、血抜き。血は飲みたい人がいたときのために器で受ける。
良く抜けたら湯をかけて羽を手際よくむしってしまいすぱすぱと包丁を入れていく。勘所があって力が少なくて良いところがあるから、娘は何も力を入れている様に見えない。
最後には並べた皿の上に肉屋の店頭であるかの様に部位別に分類された一羽分の肉が完成。
「はいどうぞ」
奥様、評して曰く
「○○ちゃん、虫も殺さないような顔してそんな…当然のような顔でさらっとしてしまうのね」
それはそれは、大層びびった顔であったそうな。