お祖母様の話
お祖母様が田舎から出てきたばっかりのメイドだった頃。
奉公先の旦那様の息子さんは良いとこの学校に通っていたそうな。
そのぼっちゃんの部屋にはえらく達筆の教育勅語が額に入ってかかっていたそうな。
あるときメイドさんは拭き掃除をしながら言いました。
「良いとこの坊ちゃんともなると教育勅語を額に飾って毎日肝に銘じたりするんですねえ。えらいですねえ。」
「何言ってんだそんなばかばかしいことするわけないだろう。大体おまえあんな字よめんのか*1」
メイドさんはちょいとかちんときました。
「良いですか坊ちゃん、」
メイドさんは額を見向きもせず教育勅語の文面とその精神についてじっくりびっしり並べ立てました。
そのあとしばらく、額を暗唱しようとこっそり練習するぼっちゃんの姿が見られましたとさ。