され竜 4,5
くちづけでは長く、愛には短すぎて―されど罪人は竜と踊る〈4〉 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 浅井ラボ,宮城
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/12
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そして、楽園はあまりに永く―されど罪人は竜と踊る〈5〉 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 浅井ラボ,宮城
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/07
- メディア: 文庫
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主人公は仕事の帰り、襲われている少女を救う。救われた少女は記憶を失っていて主人公だけになつく。断片的によみがえる記憶から、手がかりを求めて旅に出るが……?
ここにあるのは「ライトノベルのステロタイプ」的な定番萌え展開、定番萌え要素への強烈な拒絶である。少女の属性は「ありがちな良く造形された不幸少女」である。自分探しの旅に出るのも定番だ。謎の青年が現れてのこのこついてくるのも定番なら、少女が全てを知ったらものすごくひどい真実なのも定番だ。まあ終盤に主人公と同様にああすれば良かった、こうすれば良かった、…と後悔して感情移入するのはド定番ではない良さがあるけれども。
しかし、黒幕の真の目的が見えると、最初からの展開が全て意味を変える。そこがよかった。
以下ネタばれっぽいかもしれないこともない可能性があったりなかったりするっていうかないぽいのでとても気をつけてほしいですよ?と注意。
少女の悲劇が終わるころ、この小説は新たな真実を提示して展開をはじめる。
黒幕の真の目的は、果てしなく都合の良い萌え少女を作成する事にあるのだ。主人の思考を察知し、幸福を感じるようになるよう先回りして行動しつつ自分と主人に精神操作を施す完璧な擬人《小天使》の開発実験なのだ。黒幕は最終的にシミュレータ的なカプセルの中で小天使と自分だけのハーレムを実現するが、その空虚さに気づいてしまう。そこは永遠の牢獄となる。
いわゆる定番萌えで固めた定番ハーレム世界の空虚さを拒絶したい著者の志向がきっちりと主張されているのである。そしてそれが読者にきっちり空虚に感じるようにするために、この2巻があったと考えても良いだろう。なんか、編集さんに萌えの導入を強く迫られたんで捻じ曲がっちゃったのかなこの小説。
しかしこれだけ書かれてそれでもなお自分なら安穏と空虚なハーレムにひたるんだろうなと感じるところに、私自身の小ささと駄目さ加減が見えた。私だったらアナピヤOKです。駄目人間なので。
あと読み返して気づいたんだがそもそも最初の長命竜の出現時に素直に言う事を聞いていればほとんどの不幸が発生しなかったのではないか?あの竜は常に賢明だ。