悪役令嬢ものについて
悪役令嬢ものとはなにか
一言でいうなら、悪役令嬢ものとは、運命と対峙する者の物語である。
基本
貴族階級の令嬢である主人公は、あるとき「自分は乙女ゲームの作中人物で、自分の婚約者とゲームのヒロインがハッピーエンドを迎えるのを阻もうとするがあえなく失敗して排除されひどい目に合う役である」ことに気付いてしまう。主人公は自分の不幸な未来を変えるための闘争を開始するのだった。
悪役令嬢ものの面白さ
「小説家になろう」などでよく見られるジャンルで、テンプレートとしての力が強く、変化をつけても型崩れしにくいためかそこそこ読めるものが多い。未来の一つを知っている登場人物がいる場合がほとんどのため、時間改変SFの一種と考えることもできる。(PKディックの「少数報告」は同ネタといえるだろう)
もともとあったはずのシンプルなストーリーという補助線、未来改編する都合上変更の行動のつじつま合わせや影響を作者がちゃんと意識していることが多い、未来改編の方向性がおおむね自分を幸せにすることという芯が通っている、乙女ゲームというリアリティレベルのため凄惨になることは多くないなどの特徴を持ち、読者としては安心して楽しめるのが特徴。(もちろんあえてこれらを崩して挑む作家もいるが)
割と謎なのは、ヒロインの行動は寝取りになり不倫であるためCEROで全年齢ゲームにならないそうな(どっかのブログで読んだ。)それどころか逆ハーレムエンドすらある。現実のコンシューマーゲームとしては据え置き機携帯機ともに難しいとなると、スマホゲームなのかPCのエロゲなのか。でも作中人物(ゲーム転生前の主人公など)は明らかにPSVITAや3DSでゲームしてたりすんのね。スマホもあるっちゃある。乙女向けのゲームとして超有名なアンジェリークは主人公もライバルも約束された相手がいてとりあうってんじゃなくて役所に対する陳情合戦に近いそうでイメージ合わないしどっから来たのさ作中の「原作ゲーム」は。エロゲか、エロゲなのか。未来を知っていることで不幸を回避する選択肢が選べるエロゲの2周目(「痕」が思い出されます)ってイメージ重なるけど悪役令嬢ものの雰囲気はちょっと文化圏違う気がしないでもないんだよな…
豊富なバリエーション
他人にとって幸せな未来が私こと悪役令嬢にとって不幸な未来なんじゃボケ、なんとかするぞ!っていう基本線が抑えてあれば悪役令嬢ものなので、ものすごくバリエーションが豊富で楽しい。
原作(他人にとって幸せな未来)が、
- 乙女ゲーム
- 小説
- 原作はない。一度自分が不幸になる未来を見てから過去に戻ってきた
- 原作はない。現在持っている情報から不幸になる未来を予測した
などあり。
主人公は、
- 悪役令嬢が自分のために頑張る基本中の基本
- 原作における悪役令嬢の熱烈なファンが頑張る変化球
- 悪役令嬢の婚約者
- 正ヒロイン
- 原作でほとんど出ないモブ(従者、クラスメイト、兄弟など)
- 原作における悪役令嬢の元のお相手の熱烈なファンが頑張る
など、悪役令嬢ものなのに悪役令嬢と限らない。
また主人公の素性も
- ゲーム世界、小説世界への転生者
- 現地人の能力者
- ガチ一般現地人
など様々。
原作や未来知識に気付くタイミングは
- 主人公幼少期
- 学園ものの場合入学式
- 対ヒロイン対決中
- 悪役令嬢がヒロインに負ける瞬間(断罪イベント)
- 負けた後
未来改変の方法は言ってしまうとシンプルで
- 原作知識の活用
- 現代知識の活用
- 天然の高い能力と教養を活用する現地人未来予測タイプ、虎は虎なので最初から強いのだ婚約者への執着さえ捨ててしまえば恐れるものなし
だいたい未来わかってますからねえ。
ただ未来改変の方向性が色々あって面白いといえば面白い。
- 正ヒロインをすごく頑張って倒して原作でヒロインいなかった場合の未来を模索
- 正ヒロインにはかなわないので、負けた後しあわせになる布石を打っておく
- 正ヒロインにはかなわないので、早めに婚約者捨てとく。おひとりさまの輝かしい老後を目指すのだ
- 正ヒロインにどいつもこいつも取られる原因は原作知識で知ってるので先回りしてつぶす
- 正ヒロイン成長前に先に味方につけておく
- 原作原理主義者だったりするので正ヒロインを邪魔しない!(←大体意識しすぎてやらかすコメディ展開になる)
あらすじに「ぎゃふんと言わされるのはこの私!」って入ってるアレとかね。
これらの豊富なバリエーションが広い広い作品群を作っているので「また悪役令嬢ものか」じゃなくて「今度はどのタイプの悪役令嬢かな?新機軸あるかな?」で楽しんでほしいと思う。
読もう悪役令嬢モノ!