私は私だけのみかた

しかし真に利己的に行動することは尋常の知性では難しい。

霧間誠一

引用をやたら使っていたライトノベル作家上遠野浩平がいる。*1
霧間誠一という作中内作家がおり、作品の要所要所で彼の文章が引用される。彼の生まれた世界、時代どころか遥か未来やファンタジーな世界まで著作が流れ着いて引用される。作中の「難解な思想の雰囲気を持つもの」は全て彼の著作に書かれてしまっていると考えても良い。

霧間誠一はフィクションを書きたくて、書くために様々な取材をした結果を実用書として出版しその金で好きな小説を書いていた。ただし売れるのは小説でなく実用書ばかり、という作家である。これは読者から上遠野を見た姿の明らかに逆の存在で、売れるのはライトノベルだが本当に書きたいのはあとがきや霧間の文章としてつらつら書いている思想でありライトノベルを通して語っているのではないかと読者には見えている。霧間誠一は作者の投影であると思える。

ブギーポップには明確なヒロインやヒーローは存在していないが、ヒーローたらんとするものがおり、それは霧間誠一の娘である霧間凪である。霧間誠一が上遠野浩平であるなら、凪は作者の娘とも考えることができる。ということは最初あっさりやられていたのにいまではどうも無敵少女と化しているのも納得。誰だって娘は可愛い。
霧間凪は小さなころ原因不明の病気*2で長期入院していた。それがある事件により快癒し、活躍できるようになったキャラクタである。上遠野作品にはそれ以外にもしずるさんにおけるあっさりしているのになにかどろりと重い病院の描写、ゴースト、フィアグールとかなりの頻度で病院の興味深い描写が出てきており、気にいったモチーフなのではないかと思う。私は娘、妹、弟、母、それとも恋人、もしくは本人か、病弱で活躍できない人が作者のまわりに居そうな雰囲気を感じる。本人の達成できない活動的なことを作中でさせることでなんらかの解消を図っているのではないかと妄想するのだ。霧間誠一が作者なら、霧間凪は誰だろう?

*1:ここからブギーさんのファンには常識の流れになっちゃいますごめんなさい

*2:MPLSだったわけだけど